ぽめぇの暮らし

生きています

はじめに

顔がパンパンに腫れ上がる。

熱をもち、赤くなり、かゆみで死にそうになる。

 

急にこんな症状が出たのは、馬車馬のごとく身を粉にして働いた会社を辞めようと決意し、喜び勇んで出掛けた海外旅行から帰国するちょうどその日だった。

 

旅行先は、綺麗な碧い海に囲まれた小さな島国で、10月だというのに気温は30℃近くまで上がっており、調子に乗った私は焼け付くような太陽のもと海でじゃぶじゃぶ楽しく遊んだのだった。

 

きっとあの時の日焼けのせいだ。そう自分に言い聞かせ、機内で長時間かゆみに耐えて、日本に着いたと同時にパンパンの顔を隠すためにマスクを買い、その足で病院に直行した。顔の腫れは、現地を出発した時より明らかに勢いを増し、針を刺したら破裂してしまいそうだった。

 

病院では血液検査を受けた。状況を説明したところ、医師は「日焼けというより、膠原病(コウゲンビョウ)のエリテマトーデス、いわゆる蝶形紅斑(チョウケイコウハン)の疑いがあるね」などと呪文を唱え、血液検査の結果が出るまではとりあえずかゆみ止めの飲み薬でしのいでね、とその日は帰された。

 

難しい病名にハラハラし、具体的な治療をしてもらえないイライラを抱えながらも、旅行前に決めて楽しみにしていた予定には腫れた顔をたずさえて出席した。マスクを少しつまみあげてその隙間から料理を食べるなどの奇行に及び、同席者から不審がられるなどした。仕方なかった。もう顔は腫れすぎて若干変形しはじめていたのだ。

 

f:id:halca_win98:20171222233458j:imageその時の写真

 

 夫は私と向かい合うたびに「誰だよ」とゲラゲラ笑った。つられて笑い転げながら、「一生このままだったら」と少しひんやりした。

 

数日後、検査結果が出た。膠原病の疑いは晴れ、医師は「日光皮膚炎」と診断を下したのだった。やっぱ日焼けか。地黒にあぐらをかいて日焼け止めをお気持ち程度しか塗らなかったことが災いしたか。

 

その後、出された飲み薬で様子を見ていたが、かゆみはおさまるものの腫れがひかない。もしや旅行先のバカ食いで太っただけなのでは?と一抹の不安を抱えながらも、別の病院に行ってみた。

 

皮膚科で、腫れを治したい、塗り薬をくれと伝え、弱めのステロイド薬を手に入れた。しばらく根気よく塗り続けたところ、赤みも腫れも徐々に引き、気づけばもとの顔に戻っていた。

 f:id:halca_win98:20171222233625j:image腫れがひいた数日後の写真。化粧してるとかそういう要因を差し引いても輪郭が結構違う。

 

が、完治したようには感じられなかった。普段は問題ないが、何かの拍子に急に症状が出る。原因を探るべくその時々に口にしたものや行動をメモっていたがどうにもわからない。なんなの。

 

そのうち症状の出る頻度が上がった。不安が再浮上し、評判の良い別の病院をきちんと探して、改めて受診した。

 

 そこで担当してくれた安心感の権化みたいなおじいちゃん先生は、私の顔腫れMAXの自撮り写真をみて「すごく良い写真だね!こんなにわかりやすいの無いよ!」と感嘆の声をあげ、メモに「脂漏性皮膚炎」と診断結果を走り書きした。

 

はじめて聞いた病名。前の病院では、日光皮膚炎と言われた、と告げると、それはデタラメだな、と、次のような見解をくれた。「日焼けなら鼻の頭が一番ひどいはずだし、目の周りだけクッキリ症状でてないのはおかしいでしょ。」たしかに。

 

先生によると、体の中に溜まりすぎた脂が溢れ出して、顔の表面でそれをエサにする菌が炎症を起こしているらしい。

 

なんか!汚い!え、汚くない?!でも納得いかない。産まれつき、肌の細胞がまったく水分や油分を保持してくれない体質で、これまでその超絶極乾燥肌と戦いながら生きてきたのだ。なのに、脂が漏れて炎症?Damm)^o^(

 

先生に疑問をぶつけると、体が乾燥肌でも顔だけにこの症状が出る人がいるらしい。半信半疑でいると、「甘いもの好きでしょう。」と言われた。そんなもん、30歳のOLにわざわざ聞かんでもわかろう。大好きだよ。それがなんです?

 

「ダメだよ、甘いもの」

え?なに?ちょっと聞こえないな

 

、、、、、、え?うそだ、、、、、、

 

一瞬、耳が遠くなった。先生の声はオートチューンがかかっているようだった。余計な脂=余計な糖質だそうで、糖質をとにかくとらないのが良い、と食事の指導を受けた。先生は、私の愛読書、と言い、ananの「糖質制限ダイエット」の特集を見せてくれた。

 

そんなの知ってる。糖質が体に良く無いのは、3歳の頃から知ってる。

 

あまたのアレルギーや喘息を持って産まれ、例によって肌も激弱だった私に、母親は常々甘いものはよくないと注意し、制限を与えてきた。ある程度大きくなったら、そんな小言は無視して甘やかす大人に媚びては好きなものを好きに食べ散らかし、怠惰に太りながら体を掻きむしって生きてきた。

 

社会人になり拍車がかかって、市販のお菓子もラーメンもピザも更に自由に摂取し続けてきた。好きなものをやめて長生きするくらいなら、好きなものを好きに食べて早死にしてやる、と開き直っていたが、好きなものを好きに食べて顔が腫れるなんて、聞いてない。

 

これは偶然ではない。体の実状を無視し続け、奔放に毒を取り込み続けた結果、溢れ出す脂を押さえていた堤防がついに決壊してしまったのだ。これまでの愚行を恥じ、私のようなバカ者の体内で文句も言わずに戦ってくれ、ボロボロになった堤防の無念さに思いを馳せ、むせび泣いた。

 

そして決意した。糖質を制限することを。100%は厳しいかもしれないけど、顔が腫れるのは嫌なので頑張りたい。2017年12月5日。

 

同じ事情で糖質を断っている人がいたら、一緒に頑張りましょう。マハロ。